メソポタミア文明に続き、古代エジプト文明など4大文明の香りについて触れて行きたいと思います。
古代エジプト文明では、ヒエログリフ(象形文字)で書かれた香料など香りについての記述が残っています。
それは、「エーベルス・パピルス」と言う医学書で、キフィ(Kyphi)と呼ばれる薫香が記載されており、ミルラ、シナモン、コーパル、ジュニパーなど十数種類の香料が使われていたことが窺えます。
また、息に香りを付ける香錠の作り方の処方も記述されており、古代エジプトでは、香りは医療とつながりが深かったことが分かります。
また、キフィは日本のお香の練香やアラブのお香のバックホーラ(BukHoor)などの元になったものとも言われており、レシピも様々な書籍やエジプトの神殿の壁画に記述されて残っています。
中でも樹脂のお香は珍重されており、乳香(フランキンセンス)や没薬(ミルラ)は太陽神ラーと密接に関わるものとして、儀式で薫香として使用されていました。
その中で、没薬はミイラを作る際に使用されるものとして有名で、日本語のミイラの語源はポルトガル語のミルラ(没薬)であると言われています。
また、ミルラ以外にもシナモンやクローブなども使われています。
特にミルラは日本語で没薬と書くことからも分かる通り、薬としての役割を担っていたようです。
現在もエジプトに残っている古代の壁画にはロータス(睡蓮)の花の香りを嗅いでいる女性が描かれており、花の香りも人気があったと思われます。
そして、香水の起源とも思えるような香油を作って身体や髪に塗り、儀式などに使用していたとされています。
香油は植物の花などを油や油脂と混ぜて、油に香りをつけて作られていました。
また、この当時から白檀も香料として扱われていたようです。
4大文明の内の残りのインダス文明と中国の黄河・長江文明については、両者とも香りに関する文献は残っていません。
ただ、インダス文明後の宗教のバラモン教の聖典や仏教の経典などにはお香が焚かれていた記述が残っています。
また、黄河・長江文明後の紀元前2世紀ごろに仏教が伝わったと思われる記述が「漢書」にあり、お香が使用され始めた可能性があります。
そして、宋時代にはお香について詳しく書かれた「香譜」という文献があり、お香について詳しく記述されています。
4大文明と同時期にあたるアメリカ大陸ではメソアメリカ文明やアンデス文明が栄えたようですが、香りの文献は残っていません。
現代に迄伝わっている薫香としては、シャーマンが儀式に使用するコパル樹脂や香木のパロサントになります。
また、文字を持たなかったネイティブアメリカンであるインディアンは儀式にホワイトセージを使うなど文化として残っています。
様々な文明の中で生まれた香りの文化は現代にも受け継がれていることが窺えます。
主要参考文献
山田 憲太郎 (1980)「香薬東西」:法政大学出版局
本間 延実 (2005)「香料史概略と幾つかの逸話」
長谷川香料株式会社 (2013)「香料の科学」



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